ざらざら

ざらざら

クウネルに連載されていた20篇と ほかの雑誌に載った3篇
23のおはなしが収録された 短編集
どれもこれも 恋愛のおはなしのようだった
『コーヒーメーカー』 と 『山羊のいる草原』 は つながっていた
『菊ちゃんのおむすび』 『同行二人』 『淋しいな』 あたりが よかた

 あたしは一回も「恋愛」っていうものをしたことがないんじゃないかと、ときどき思う。会いたくて、声を聞きたくて、抱きしめられたくて、居ても立っても居られないなんていう男の子が、かつていただろうか。あたしには思い出せない。いつだったか、そういう男の子がいたような気もするんだけれど、うまく思い出せない。過ぎてしまったことは、思い出せない。
― 『淋しいな』 P123